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ノルウェー語に関わる人たち~2018ノルウェー旅行記~

9月の旅行では、様々な形でノルウェー語に関わる人と会うことができました。
まずはノルウェー語の総本山(?)であるSpråkrådet「ノルウェー語委員会=国語審議会」にお邪魔しました!オスロ大学留学中にもスタディーツアーでお邪魔しましたが、現在は国立図書館内にオフィスを移転しています。SNSやサイトを通じてノルウェー語にまつわるニュース発信や「正しいノルウェー語」普及のための講座開催、他にも一般からの質問を受け付けたり八面六臂の活躍をする団体なのですが・・・私も語学書執筆中に何度か質問をして回答をいただき、感謝しています!
今回は、シニアアドバイザーのBjørg Nesje Nybøさんにお会いすることができました。約束の時間、オフィスに入るやいなや「ここに登録して!」と言われて「ええ??」と驚くと、同会が発行しているSpråknytt「言葉のニュース」という冊子の購読登録でした。ここのページに登録すれば、日本でも無料で冊子が送ってもらえますのでお勧めです!実は昔、購読していたのですが、引っ越し時に住所変更を怠っていて・・・はい、ちゃんとこれから購読します!

Språknytt

まずはBjørgさんに簡単な自己紹介をしつつ『ニューエクスプレスプラスノルウェー語』の献本をしました・・・(頼まれていませんが)。前回も書きましたが、本があると(たとえ日本語で何が書いてあるのか分からなくても)感心してもらえるのでありがたいです。特に私は組織に属していないので、それを実感しますね。とても感じの良いBjørgさんに甘えて、ついつい「ノルウェー語の選択肢の多さが教える時に悩ましいです」と悩みを吐露しちゃいました。曖昧な女性名詞の扱い、複数ある表記法、豊富すぎる方言などなど。中でも女性名詞の扱いについては、アドバイスをいただき助かりました!

Bjørgさん

他にも「日本ではノルウェー語がマイナーすぎて、よくスウェーデン語ですか?とか間違えられますね。あ、日本では圧倒的にフィランド語が人気です」とさらに悩みというか愚痴が続きます・・・。「どうしてフィンランド語?」「ムーミンが人気なんです」と答えると「ムーミンはいいものね~」と二人して納得。ノルウェー人もそれなりにムーミン愛が深いなぁと感じますね。
ぜひノルウェーの文化発信に「ノルウェー語」を加えてほしいと直訴してきましたー。Språkrådetは文化省の管轄下にありますが、現文化大臣は「言葉に理解がある」とのことで喜ばしいです。

さらにUiO=オスロ大学ISS(インターナショナルサマースクール)および外国人向けノルウェー語講座を運営されているInger Egebakkenさんにもお会いしました(ちなみにIngerさんに会えるよう助けて下さったのは、オスロ大学勤務の阿部未来菜さんです。Tusen takk!)。
「過去に2回、ISSに参加しました」と言い、恒例の『ニューエクスプレスプラスノルウェー語』の献本をすると、それだけで喜んでもらえました。ISS参加歴のある生徒さんから「ISSは申請者数が増えているみたいです」と伺っていました。その点を確認すると「増えているわね」とのこと。もともと、アメリカのノルウェー系子孫のために開設されたISS。今でもアメリカ人受講者が一番多いそうです。アジアからは「中国、フィリピンが多い」と教えてもらいました。「では(必要書類など揃っていれば)誰でも入れるわけではない?」と質問を重ねると、選考時の基準などを説明してくれます。さらにオスロ大学のノルウェー語講座について質問を続けようとしたところ・・・

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みたいな大音量の警報が鳴りました!Hva? 何?警報ベルの誤操作?と思いきや「外に出ないと」と促されて、会議室からそそくさと建物の外へ出ました。学生たちもたくさん集めっていて「間が悪すぎる・・・」と残念な気持ちに。しかーし、せっかく時間を作って下さったので、外のベンチに座ってIngerさんとお話を続けます。
ノルウェー語のレベル1~4までありますが、ホント、講義についていくのが大変だったと苦労話をひとしきり。「あの講義はハードよね。例えばレベル2の試験に落ちて、2回、受講する学生もいる」とのこと。さらにさらに、Ingerさんは過去、ご自身でもノルウェー語を教えた経験があり、この言葉が印象的でした。

Ingerさん

「私はいろいろなバックグラウンドがある人間に興味があって好きなのよ。だから様々な学生たちに出会えるこの仕事が気に入っている。」
私はほぼほぼ日本人にしかノルウェー語を教えたことはありませんが、でも「人間に興味があって好き」は同じです。「ノルウェー語」という媒体を通じて、知り合い、つながれるところがだいご味だと感じますね。

日本人学生の記憶も語ってくれました。
「日本人の男性研究者が多かったかしら。他のヨーロッパの研究者たちはそのまま結婚してノルウェーに残るケースがあったけど、日本人は帰っちゃうわね」とのこと。私も「帰っちゃった」組ですが・・・(日本人は残りたくても残れない??)。「今でも覚えているけど、日本人の男性研究者はこちらの研究環境にとても満足してくれて・・・だから帰国する前に”帰りたくない”って泣いていた」のエピソードは刺さりましたーーーー!自分も旅行中「帰国したくない」がほぼずっと脳裏にあったので、その日本人男性研究者にシンパシーを感じましたね。
「もっとたくさんの日本人がISSに応募してね!」と明るく呼びかけてくれました。皆さまもぜひ!

北ノルウェーのアルタでも、ノルウェー語に携わる人たちを訪れました。
日本の赤十字よりノルウェーのの方が身近に感じるのは気のせいでしょうか?各地の赤十字が、Norsk hjelp「外国人のためのノルウェー語お手伝い」をボランティアで実施しています。こちらのサイトをご参照ください→https://www.rodekors.no/tilbudene/norsktrening/
アルタでお世話になった元生徒さんが、言葉にこだわる私のために、Norsk hjelpの会場へ連れて行ってくれました。アルタの中心地にある文化センターSISAで毎週行われているNorsk hjelpへお邪魔します。

SISAの目印

Hei,Hei!
と明るく出迎えてくれたのは、年配のノルウェー人女性たち(男性は一人でした)。元生徒さんは別の曜日に開催されているStrikke Kafé=ニットカフェに参加しているので、「あ、編み物する人ね!」とちょっとした有名人になっていました~。自己紹介をしつつ、自分が日本でノルウェー語を教える仕事をしているので、皆さんがどうやってノルウェー語の手助けをしているのか見学したいと説明しようと思ったのですが「まずはご飯食べてちょうだい」と夕食を勧められます。「夕食は済ませてきました」と遠慮したのですが、「いいから、食べて食べて」と親切におっしゃってくれるので、少しご馳走になりました。タイ米とカレーっぽいソースがかかっていたお料理です。
外国人は10人くらい。国籍は日本(私たち以外にも日本人がいました)、韓国、タイ、シリア、ロシアなどなど。普段、教える立場なので、ボランティアの方たちがどんな風にノルウェー語のアシストをするのか100%好奇心で臨みました~。ノルウェー人ボランティアが、1、2人の外国人の会話パートナーになります。ボランティアスタッフは、入れ替わっていくやり方でした。

SISAの中にあるピアノはサーミの色

分かりやすいノルウェー語で話しかけてくれる・・・と思いきや???が頭に浮かびます。こ・・・これは・・・強烈な方言?しかも北ノルウェーの方言に非ず。不思議に思って出身地を尋ねると南ノルウェーの地名を口にされます。そして「あの人は~、あの人は~」とボランティアたちの出身地を教えてくれたのですが、見事に南の人ばかり!南ノルウェーの方言はデンマーク語に影響を受けていて、rの発音をフランス語のように喉を鳴らすのです。「なぜアルタにいるのに南ノルウェー人ばかりなのか?」と疑問が残りましたが、「こうしたボランティアは熱心なクリスチャンが担い手になっていることが多い、南ノルウェーは信仰心が篤いから、そこの出身の人が多いのかも?」と仮説を立てました(後日、ノルウェー人の友達に尋ねたところ、この仮説は当たっていたことがわかりました)。

SISAに飾られた絵

ノルウェーで面白いのはこういうことですよね。アルタにいながら、南ノルウェーの方言の人たちがノルウェー語ボランティアをしてくれて、知らず知らずに多様な方言に触れることにつながります。
ちょっとインタビューを試みたところ、ボランティアの方たちは「元先生の年金生活者が多い」とのこと。
ノルウェー語で日常的な質問をして、さりげなく間違いを直して、新しい表現や単語を教えていく過程を目の当たりにしました。集まっている外国人は自治体のノルウェー語講座に通っている場合が多いですが、プラスアルファで、ここにやってきてより会話の機会を増やしているのかな?と想像しました。言葉だけではなく「編み物が好きならば、○○とコンタクトを取ってみなさい。彼女はエキスパートよ」みたいに地元のネットワークにつないでくれるお手伝いをしていました。ノルウェーには家族しか知り合いがいない、または家族もいない外国人にとっては、ネットワークに入ることはとても大事。なんといっても、ノルウェー全体が「コネ社会」なのですから・・・。

オスロとアルタ。「ノルウェー語」をキーワードに様々な方たちに会うことができ、嬉しかったですし「これからも頑張ろう―」という気持ちになれました。Tusen takk!

北ノルウェー名物のMackビール

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