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作家リン・ストロムスボルグさんと会う~2018ノルウェー旅行記~

オスロでの滞在は、観光よりも「人と会う」時間が多いです。9月には作家のリン・ストロムスボルグさんLinn Strømsborg)に会うことができました。
実は渡航前、NORLA(ノルウェー文学海外普及協会)の11月の来日時に、ノルウェー人作家2人も同行することが分かりました。リンさんとモニカ・イサクストゥーエン(Monica Isakstuen)さんです。リンさんはオスロ在住と知り、「会えませんか?」とコンタクトを取ったのです。快諾していただき、旅の楽しみが増えました!

激しい雨が降る中、待ち合わせ場所のLitteraturhuset「文学の家」に向かいました。ヘッドフォンをつけたリンさんがやって来て、Hei!と挨拶を交わして、カフェに座ります。
座ってから気づいたのですが、私は1冊も彼女の本を読んでいないのでした・・・そのことを告げてもリンさんは気にしていない様子。どんなバックグランドかを伺ってみました。
「小さな頃から本を読むのが好きだった。そう、Lesehest(直訳すると「読書の馬」=「本の虫」のことです)だったの。大学では文学を専攻、書店でアルバイトをした経験があるのよ。」
-書店で働くのはどうでしたか?
「とても楽しかったわね。常連さんにお勧めの本を教えたり、会話を楽しんでいた。今はFlammeという出版社で働きながら、作家活動を行っているのよ。」
-兼業なんですね?
「ええ。でも今は新作を執筆中なので、”執筆休暇”を取って最中なの。」
執筆休暇なるものがあるとは、さすがノルウェー!と感心しました。
それから「これをどうぞ」と1冊の本を受け取りました。ポケットブックの黒い表紙には”Furuset”と書いてあり、リンさんの3冊目の小説だそうです。

Furuset

タイトルのFutuset=フルセットは、オスロのベッドタウンの1つを意味しています。実は偶然、フルセットに行ったばかりでした!
-先日、Bymuseet=オスロミュージアムに行って「70年代展」を観てきました。そこにフルセットの地名が書いてあって「まだフルセットには行ったことがない」と一緒にいた友達に言ったら「今から行こう!」となって、メトロに乗って行ってきたばかりなんです。
「本当?偶然ね」
フルセットで生まれ育った彼女に、どんな小説なのか話を聞いてみると・・・
「自分が生まれ育った土地には複雑な感情があると思う。読んでもらえると、分かると思うけれども・・・」
という言葉が返ってきました。それを聞き、訪れたばかりのフルセットを思い出しました。みんなが住みたいと憧れるエリアとは言えないかもしれません・・・でもだからこそ、フルセットが舞台にする面白さがあるのかも?と想像しました。
それからノルウェーの大ヒットドラマSKAMの話題(どのシーズンが好き?と聞いたら「シーズン1」だそうです)、SKAMの舞台になったNissen高校にリンさんも通っていたと聞き、盛り上がりました(しかも演劇科!)。さらに執筆中の小説について聞きました。
-どんな内容になるのですか?
「子どもを持つか持たないかのテーマを書いている。」との答え。わー、興味あります!
-私は子どもがいませんが、ノルウェーでは子どもを持つことがとても当たり前ですよね。例えばノルウェー語では、子どもを持たない人をbarnløs=子なしと表現しますが、悲しいイメージです。
「そうそう。私もその単語は好きじゃない。スウェーデン語では”barnfrihet“=子どもの自由、と表現するみたい。この単語の方が前向きな感じがする。自分は子どもを持つかどうか決めていないけれども。」

リン・ストロムスボルグさん

と語ってくれました。それから来日経験がないリンさんへ幾つかのアドバイスを偉そうにしちゃいました。現金が必要なこと、英語が通じないことが多いこと、ともかく人が多いことなどなど・・・
「日本へ行かれるのは楽しみだけれども、不安なの」とリンさん。ノルウェー人は楽観的なイメージですが、リンさんはかなり不安そうに見えました。
「じゃあ日本で会えるのを楽しみにしています!」とお別れしました。本にはとても素敵なサインをしていただき・・・感激です!

ちょっと時計の針を戻して・・・リンさんと会う2日前。私はノルウェー人の友達とフルセットへ向かう地下鉄に乗っていました。ライン2の地下鉄はオスロ西~東へ長く縦断しています。
オスロ中央駅から東方面へ20分くらいでフルセットに到着なのですが・・・たった20分でもオスロ西や中心地とは異なる風景が車窓の外に広がってきました。到着まで長く感じたほどです。
ベッドタウンのことをノルウェー語でdrabantbyと言います。戦後、オスロの東側エリアに幾つかのdrabantbyが建設されました。住宅不足を解消するためです。それまでの狭くて不便な集合住宅に比べれば、ベッドタウンに建設された団地は、当時の人々の憧れだったようです。専用のキッチン、バスルーム、そしてセントラルヒーティングなどなど。日本のベッドタウンと共通点がありますね。

フルセット(リンさん提供)

降り立ったフルセット駅は、典型的なdrabantbyに映りました。高層団地やちょっとさびれた感があるショッピングセンター、そして比較的多い移民たち。建設当時の「憧れ」は消えてしまったような・・・。
・・・・と書くとフルセットは否定的な響きしかないように感じてしまいますよね。町の散策をしていると、農園があって驚きました!なぜここにーーーー??鶏がいるーーーー!
ノルウェーのベッドタウンについて、ステレオタイプなイメージに収まらない事実があるのだなぁと実感します。

住宅地の農園

予想以上にたくさんの自然を体感しつつ、オスロ中心地を見下ろす眺望も満喫できました。初秋の雰囲気が漂っています。

洋梨が落ちてました

リン・ストロムスボルグさんの”Furuset”を読む前に、実際のフルセットに足を運べて良かったなぁと、その後、実感することになりました。

フルセットからの眺め

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