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ノルウェー映画『ヒトラーに屈しなかった国王』雑記

ノルウェーについて全く知らない人に『ヒトラーに屈しなかった国王』(Kongens nei)という映画はどう映るのでしょうか?興味ありますね。
本映画については、公式サイトやたくさんのメディア、ブログでも取り上げていますので、そちらをぜひご参考にしてください!このブログでは、ちょっと違う視点で書いてみようと思います。

(C)2016 Paradox/Nordisk Film Production/Film Väst/Zentropa Sweden/Copenhagen Film Fund/Newgrange Pictures

ノルウェー語レッスンで使っているテキストに、簡単なノルウェー史が掲載されています。「ナチス軍がノルウェーを侵略後、ホーコン国王は家族とともにロンドンへ避難。ラジオを通じて国民に抵抗をよびかけた。」これを読んだ時は「自分たちは外国へ避難したのね。ロンドンから抵抗をよびかけるってどんな感じ?」とバチ当たりな感想を抱いたことを告白します・・・。しかしテキストには「ナチス降伏後、国王はノルウェーへ戻り、国民がその帰還を熱狂的に迎えた」ともあり、「逃げた王様なのに国民に人気なの?」とフシギでした。ホーコン国王の「愛されエピソード」は、ノルウェー絵本『うちってやっぱりなんかへん?』(青木順子訳、偕成社)の著者トーリル・コーヴェさんの絵本『王様のシャツにアイロンをかけた私のおばあちゃん』で丸々、1冊になっています!

絵本で描かれた国王一家

バチ当たりついでに、もう一つ。ノルウェー国王は、”Alt for Norge“「全てはノルウェーのために」というモットーを継承しています。
ホーコン国王、オーラブ国王、そして現在のハーラル国王が同じ”Alt for Norge”をモットーにしているので「もっと他に考えられないのかしらね~」とちらっとよぎったことがありました・・・・しかーし、『ヒトラーに屈しなかった国王』を観ることで、全てのばち当たりな思いは吹っ飛び、ホーコン国王をはじめ国王たちの偉大さと誠実さにひたすらひれ伏す気持ちです。

9月のノルウェー渡航中に、たまたまホーコン国王に関するニュースを見ることができました。
国王の孫であるアストリ王女が、避難先のロンドンでホーコン国王の銅像の除幕式に参列。その際、テレビのインタビューに応じて「戦後、ノルウェーに戻ってきた国王は戦争被害の甚大さに衝撃を受け、自身の決断が間違っていたのでは?と厳しく自分を責めていました。」と語っていたのです。映画を観れば、ヒトラーに抵抗しようとした国王の決断はまさに「苦渋」の連続であり、正しい選択だったと思うのですが・・・それでもアストリ王女が語る亡き国王のエピソードは、映画のホーコン国王と重なり、ゆえに国民から深く愛されたのだなぁ~と納得したのです。

(C)2016 Paradox/Nordisk Film Production/Film Väst/Zentropa Sweden/Copenhagen Film Fund/Newgrange Pictures

このニュースを一緒に見ていた年配のノルウェー人の友達は「国王の国葬は、とてもたくさんの国民に送られて・・・忘れられない光景だった」と語っていました。1957年のことです。

映画では国王自身のモノローグやナレーションはありません。なので、デンマーク人俳優イェスパー・クリステンセンの演技とただずまいから推測するのみです。息づかいまでが聞えるような演技は素晴らしいの一語。ノルウェー語や北欧語好きとしては、ホーコン国王のデンマーク語とオーラブ王子のノルウェー語のやり取りにぜひ注目を!個人的には、国王のデンマーク語に萌え~♡

(C)2016 Paradox/Nordisk Film Production/Film Väst/Zentropa Sweden/Copenhagen Film Fund/Newgrange Pictures

エリック・ポッペ監督の他作品『おやすみなさいを言いたくて』でも感じたのですが、爆音や銃撃が派手ではなくても、観る者に臨場感を与えられるのはなぜ?と不思議です。監督が戦場カメラマンであり、戦争や紛争、暴力について「肌感覚」でわかっているからでしょうか。先月は待望の来日を果たし、ノルウェー大使館で開催されたトークショーに参加しました。「できるだけ歴史に忠実にしたい」という熱意のもの膨大なリサーチを行ったそうですが、前述のアストリ王女からも直接、話をいろいろと伺うことができたとおっしゃってました。トークショー前にちょっとだけノルウェー語でご挨拶ができてテンションUP!

お茶目なエリック・ポッペ監督

現国王が住まう王宮をロケ地に使うなど徹底したリアリジムへのこだわり・・・。エリック・ポッペ監督の次回作は、2011年のノルウェー史上最悪の連続テロ事件「ウトヤ島」をテーマにするとのことで、こちらも楽しみです!(ウトヤ島に関するブログやサロンレポートは以下にあります。http://norwayyumenet.noor.jp/2014/12/15/6080/
http://norwayyumenet.noor.jp/2015/10/14/8766/
http://norwayyumenet.noor.jp/hp/info/kouzaannai2014/salongreport67.htm

ノルウェーを愛する皆さま、”Alt for Norge”の言葉が、どれだけの重みを持っているかを知るために劇場へ馳せ参じましょう! 12/16(土)シネスイッチ銀座ほか全国順次公開です。
『ヒトラーに屈しなかった国王』公式サイト:http://kings-choice-jp.com/

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