Part2では、『神さまに誓って』(”Ti kniver i hjertet“の魅力や特徴など書き連ねたいと思います!(Part1はこちらから)
本書との出会い
まず、ノルウェーのネット書店サイトで見つけ、可愛らしい表紙に惹かれて購入しました(値引きされていたのも一因!)。北欧=「可愛い、おしゃれ」のイメージがありますが、実際の絵本やイラストは日本人受けしない「リアルで可愛くない」ものが多いのです。ですが、2年前、『神さまに誓って』をブックトークショーで紹介した折、参加者たちから「イラストが可愛い」「ぜひ日本語で読んでみたい」と高評価をいただき、後押しされる気持ちになりました。

トゥーヴァとマリアム
魅力やユニークな点
グラフィックノベルって何?と分からない方が多いでしょう。実際、「海外漫画」と表現されることが多いですし、漫画との違いは作品によって、様々だと思います。
本書は、コマ割にこだわらない自由な日記スタイルという点が目を引きます。メッセージのリアルなやり取り、実在のアーティストや曲名が記されているSpotifyのプレイリストが効果的に挿入され、物語の世界へ入り込みやすい構成が、作者Nora Dåsnes(ノーラ・ドスネス)の特徴です。

メッセージのやり取り
また主人公トゥーヴァは「自分ツッコミ」を忘れず、周囲への観察眼も抜群。時にシリアスな場面もありますが、ユーモラスな語り口も本書の魅力だと思います。
同性愛の描かれ方
作者自身、インタビューで「バイセクシャル」を自認しています。本書では、トゥーヴァが同性であるマリアムに恋する気持ちが大きなテーマと言えるでしょう。
ノルウェーは日本に比べてLGBTQ先進国です。世界で2番目に同性同士のパートナーシップ婚が認められ、2009年には「同性婚」が法的に執行されました。とはいえ、まだ偏見は存在し、それゆえ、本作でもトゥーヴァがマリアムへの想いを必死に隠そうとします。
ただ、主人公の友達や周囲の受け止め方に時代の変化を見ました。トゥーヴァがバオにだけマリアムへの恋心を打ち明けますが、バオは「女の子を好きになったの??」という反応は見せません。また物語の終盤、男子から「トゥーヴァ、女ができたのか?」とからかわれるシーンでは、トゥーヴァの友達のリネーアたちが男子を粉砕します!(その爽快感!)
本書が素晴らしい点をさらに挙げると、「性的マイノリティで悩む人にどう接すればいいのか?」のロールモデルが多数、描かれています。トゥーヴァは孤独感に襲われますが、理解あるパパ、そして友達や音楽が支えになってくれています。

パパが作ったLGBTQプレイリスト
作者のスピーチから
作者はアメリカで優れたLGBTQIA+の本に贈られる“Stonewell Book Awards”YA部門を2024年に受賞しています。そのスピーチが素晴らしいので引用しましょう。
『神さまに誓って』を執筆した時、私の大きな目標は読者の孤独感を和らげることでした。というのも、小学高学年から中学時代は孤独な時期であることが多いからです。友情は複雑になり、体の変化は奇妙で気恥ずかしく、初恋のショックと恐怖を経験します。そして、初恋の相手が自分と同じ性別の人であれば、さらに孤独を感じることがあります。
この本を子どもたちが手に取るようにサポートしてくれたすべての教師、書店員、司書の方々に心から感謝します。私はいつもスピーチをするときには司書の方々に特に感謝しています。アメリカ図書館協会の情報へのアクセスと検閲反対の活動は、ノルウェーで非常に高く評価されています。LGBT+ の本を棚に並べるために奮闘している司書の方々、本当にありがとうございます。皆さんは、暗く恐ろしいと感じることもあるこの世界で、光の灯台なのです。
最後に、最も大切なことですが、読者の皆さんに感謝します。私の目標は、皆さんの孤独感を和らげることでした。皆さんが私に対して同じことをしてくれるとは思ってもいませんでした。
「孤独感を和らげること」が目標だったという言葉は強い印象を残しました。ノルウェーのブックレビューで「私が子どもだった時にこの本があれば良かったのに。」というコメントを見つけましたが、私も同感です。
本書の今日性
「世界は黙っていて良くなるものではない」がノルウェー人の友達の口癖でした。
世界を見回せば、トランプ大統領が打ち出した「反DEI」(多様性・公平性・包括性)の影響は大きく、ヨーロッパでも同性愛禁止に逆戻りした国があります。そして日本の高市首相も「同性婚反対」と報道されています。せっかく積み上げてきたLGBTQへの理解が後退しないためにも、本書の意義、今日性は大きいでしょう。
ぜひ、本書を邦訳出版したい!と何人かの編集者の方に見ていただきました。内容の素晴らしさを認めて下さっても「オールカラーでコストがかかる」などの理由で、残念ながら落選続きです。難しいかもしれませんが、何とか日本の読者の方に届けたい一冊です!

表紙







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