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『ニューエクスプレス アイスランド語』発売!

ニューエクスプレス アイスランド語』(入江浩司著、白水社)がついに発売されました。これで北欧5国語がすべてニューエクスプレスシリーズで揃ったのです。私と著者が知り合いなのは偶然にすぎず、ブックレビューをゆるゆると綴りましょう。

まず本書の「はじめに」から印象に残った文章を引用します。
「私自身は、ことばの構造そのものに対する関心からアイスランド語の勉強を始めました。一千年を超える昔の話し手たちの記憶を色濃くとどめながら、現代社会にも柔軟に対応している奇跡のような言語だと私は思っています。」
確かに。アイスランドの人口は33万人しかいないとか、英語が通じるからアイスランド語を勉強する必要ないとか、次元が違うと感じますね。

本書は20課から構成された会話スキットを基に文法や発音解説、関連表現、文法問題、単語リストなどがプラスされています。
早速、付属CDを取り出して、テキストを見ずにアイスランド語の発音の後に、自分も発音を繰り返しました。これが面白い!(75人の在日アイスランド人から選ばれしナレーターの貴重なCDです)
ノルウェー語と似ている音は「あの単語かな?」と推測できますし、全く未知の音、未知の言葉も当然あります。それからテキストを開き「ほー、こういう単語なんだ、こういう意味なんだ」と答え合わせをしてみました。例えばこの例文の意味はわかりますか?
Ég er frá Japan.
「私」を意味するÉg。ニーノシュクのegと似ていますね。これは楽勝?と思いきやこんなフレーズがありました。意味はわかりますか?発音できますか?
Til hamningju með afmælið.
「お誕生日おめでとう」を意味するそうです。ノルウェー語の”Gratulerer med dagen”の面影はありません・・・もしアイスランド人のお友達がいれば、Facebookのバースデーメッセージで使えますね。

私はどうしてもノルウェー語の比較からアイスランド語を眺めてしまいます。名詞の性が男性・女性・中性なのは一緒ですね(ノルウェー語の女性名詞の扱いはかなりビミョーですが・・・)。格変化がアイスランド語には残っているのは大きな違いです。例えばkleina「クレイナ」というアイスランドの伝統的な甘味パン(食べてみたくなる!)は女性名詞ですが、こんな風に変化するそうです。

単数      複数
主格 kleina    kleinur
対格   kleinu        kleinur
与格   kleinu       kleinum
属格   kleinu       kleina

ノルウェー語は今では名詞+sをつける所有格しか残っていません。格変化LOVEな人にはお勧めのアイスランド語です!他に「あ、違う」と気づいたのは国名にまで名詞の性があること。ノルウェー語にはないんです。ちょっと引用しますね。

Ísland アイスランド(中性)
Noreg ノルウェー (男性)・・・ニーノシュクのつづりと一緒ですね~。
Japan  日本(男性)

アイスランドといえばBjörkビョーク。「ビョークは僕のお気に入りの歌手なんだ」という会話スキットに登場しますが、読み進めるとこんな一文が。

Jón Leifs er uppáhaldstónskáldið mitt 「ヨウン・レイフルが私の好きな作曲家なの」

ヨウン・レイフルはクラシックの作曲家のようですが、こんな豆知識も得ることができます(おそらく著者の推しはこちら?)。

同じニューエクスプレス執筆者として、自然な日常会話に文法アイテムを盛り込むのが大変たったのでは?と想像します。ですが、著者は丁寧でなるべく平易な説明を心がけているのがわかります。最後の方に掲載されている9ページの「語形変化表」まで付いていて、これで3600円(税抜)は本当にお得ですね!

北欧語を学習した人が「すごろくのあがり」のように始めるアイスランド語、と思っていますが、全くの知識なしで始めるのもワクワクすると思います。日本に10万はいるアイスランドファンの皆さんはもちろん、北欧語やその他の外国語好きな方、古いようで新しいアイスランド語の世界に触れてみませんか?

1996年のアイスランド旅行から

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