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「ムンク展」図録で分かったこと

10/27から東京都美術館で「ムンク展」が始まりました。すでに展覧会へ行かれたましたか?
今春、ムンク展図録のノルウェー語翻訳を一部、担当しました。ムンク美術館のヨン=オーヴェ・スタイハウグ(Jon-Ove Steihaug)さんの原稿です。
原稿を読みながら「私はムンクについて知らないことが多かった」と気づきました。あんなにノルウェーでムンクの作品に触れ、《叫び》の舞台であるEkeberg(エーケバルグ)に行って叫びのポーズまでしたのに・・・

叫びの舞台

スタイハウグさんの原稿から分かった印象的なことに「ムンクは才能があるだけではなく、実業家的な側面も持ち合わせていた」点があります。
アルコール中毒、精神疾患、女性とのトラブルなど破滅的なイメージが強かったので意外でした。たくさんの作品を創作しながら、展覧会の計画を立てて、かつ美術館館長、パトロン、コレクター、友人など自身を支援してくれるネットワークを形成していたそうです。その箇所を読み「ちゃんと考えている!」と驚きましたね。絵を描きっぱなしではダメなんです、ちゃんと自作を見てもらうための努力を惜しまなかった。
生存中に成功を収めた裏にあったものに触れた気がします。

お札にまでなっていた成功者

家族の死を体験している影響からか「死」をモチーフを多く描いたムンク。散々、破滅的な行為に身を委ねながら、でも81歳まで生きていたなんて・・・!(1863-1944)基本情報、知りませんでした。
2017年のノルウェー人男性の平均余命が80.91歳という事実と比べて、「寿命って何だろう?」って思っちゃいますね。しかもムンクは最晩年まで創作活動を続けていました。今回の「ムンク展」では約100点も展示され、見ごたえ十分ですが、それもこれもムンクが多作家だったからの恩恵なのです。

ムンクは実は女性にモテる男性だったという基本情報もスタイハウグさんの原稿で知りました。え?今更ですか?だって、《嫉妬》とか《メランコリー》とか《別離》とか女性に裏切られた、フラれた風の男性を描いていますよね・・・
実際は、言い寄ってきたり交際した女性たちと結婚することを回避し、逃げ回っていたなんて・・・成功、長寿、しかも女性にモテていた事実を訳しながら「嘘つき!」と脳内で叫んでいました。

オスロのナショナルギャラリーにて

・・・と愚痴になりつつありますが、スタイハウグさんの解説によって面白いと感じた作品が幾つかあります。
ムンクは新しい技術に興味を持っていたそうです。早い段階でカメラを購入し、たくさんの写真を撮影。映画も好きで、映画用カメラまで有するようになったとか。
《疾駆する馬》という作品は、疾走する馬がキャンバスを突き破って出てくるような迫力と構図になっています。写真や映画から受けた影響が指摘されています。構図が面白いという点では《黄色い丸太》も同じです。

ムンク展のムービングピクチャー

ムンクが一時、目の病気を患い、視覚に影響を受けていたことは知ってましたか? 私は知りませんでした。《狂った視覚》というそのものズバリのタイトルの作品で、何とも形容できない抽象的な物体が描かれています。こんな風に見えていたのか?想像力が膨らみますね。

数多くの自画像も興味深いです!若いころの「自意識過剰気味」の自画像もいいのですが、晩年の《皿に載った鱈の頭と自画像》が面白いですねー。鱈に見えないんです、この皿に載っているものが。いろいろな解釈ができる1枚だと思いますので、ぜひ「ムンク展」でご確認してください。あととても分かりやすい図録もお買い求めくださいねー。翻訳は大変でしたが、とてもいい勉強になりました!

図録です!

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