2014年の「ノルウェーナイト」に続き、再び仙台で講演をすることができました。今回は「男女共同参画推進せんだいフォーラム2017」の1コマとして参加です。畏れ多いですよね~。
企画・運営の「ノルウェーに学ぶ会」の木村さち子さんとは、かなり長いお付き合いになります。「ノルウェーについて学ぶサロン」の前身「ノルウェーについて学ぼう」にわざわざ仙台から参加してくださったのは2005年でした。
仙台市は、2012年よりノルウェーから「東日本震災復興のための女性リーダーシップ基金」という形でさらに同国と結びつきを持ちました。ということで私にも思い入れがある街です。
2月に翻訳出版した『うちってやっぱりなんかへん?』(トーリル・コーヴェ著)を糸口にノルウェーの家族について話してくれませんか?と木村さんから8月に依頼をいただきました。同書は60年代のノルウェーが舞台。働くママを持つ主人公が専業主婦のお母さんに憧れるエピソードなど、今のノルウェーとは隔世の感があります。興味深いテーマをいただいたので、9月にノルウェーで小さな子どもを持つ家族への取材を含めました。ノルウェー人の友達の紹介で見学を快諾してくれたMartinさんは職場と家庭を見せてくれて、妻のMajaさんや2人の子どもたちと一緒に時間を過ごしたのですが・・・。ノルウェー人が大好きな言葉「家族を大切にする」を体現するのはこういうことなのか、を実感した短いながらも貴重な見学となったのです。
さて11/19の講演当日。早朝の新幹線に乗って仙台へGO!1時間半あまりで到着なんて~~~。早いです!会場のエル・パーク仙台へ向かうと、複数のセミナーが準備中。人で賑わっていました。震災の影響から「女性と防災」というコーナーが目につきます(大事なテーマですよね)。セミナー室に向かうと「せんだい男女共同参画財団」理事長の木須八重子さんや他のスタッフたちが準備中。
ノルウェー大使館から講演用にいただいた資料が並び、私も持参した絵本を販売させていただくことに。ぱらぱらとお客さんが入って下さり「ありがたや~」と心の中で感謝。
10時半に「ノルウェーに学ぶ会」木村さんがご挨拶をして、講演を始めました。
ノルウェーを知らない方のために基本データや名所の写真、各種ランキング上位常連国(「世界一暮らしやすい国」「お母さんに優しい国」「子どもに優しい国」「幸福度世界一」など)であることなどを紹介します。それらを踏まえて「ノルウェーは昔から男女平等な国だったのか?」「どうやって今のようになったのか?」という私もよく聞かれる質問を投げかけてみました。
答えを探るために『うちってやっぱりなんかへん?』をお見せします。主人公の「わたし」のモノローグから「うちのママは外で働いていた。そんなママは、あのころはめずらしかったの。」などを朗読します。60年代に「わたし」のママのような専門職でフルタイムで働く女性は少なかったと説明を加えました。
そこから一足飛びに現代のノルウェーへ。Martinさん一家訪問記の写真をたくさんお見せしながら、話をしました。
勤務先の高校や授業の様子、さらに息子が通っている保育園へのお迎え、帰宅後の夕食づくりなど。パートタイムとはいえ15時には職場を後にできるのが羨ましいですよね。お連れ合いのMajaさんは16時頃に帰宅。40歳にして博士課程在籍ですが、ノルウェーの博士課程は給料が出ること、またMajaさんは住宅銀行から援助を受けての研究生活であることを説明します。家族4人そろって17時頃には夕食を食べましたが、Martinさんは平均的ノルウェー人よりお料理上手でしたね。
夫妻は仕事・家事・育児を理想的な形で分担していましたが、様々な質問に率直に答えてくれました。在宅勤務も柔軟に認める「フレキシブルな働き方」、保育園整備など「2人分の収入で家族を養うための社会づくり」、「そもそも育児や家事をしない男性はパートナーとしての魅力がない」などを引用します。夕食後はMajaさんが後片付け、Martinさんが子どもの宿題の手伝いなどバランスよく分担が行われている様子も写真を見せながら紹介。たまたま友だちの知り合いということだけで見学したご家族でしたが、理想的な働き方・暮らし方ができているのに、今さらながら驚きますね~。
講演では、SSB(ノルウェー中央統計局)が発表した「2006年と2016年 小さな子どもを持つ両親の家庭内外労働時間比較」の最新統計も紹介しました。依然として女性の方が男性より有償労働時間が短いのですが、2006年と2016年では男女差が縮まっており、特に0-1歳児を持つ父親の労働時間短縮が顕著に分かる結果です。加えて育児や家事によりフォーカスした2010年の統計から、1980年に比べて、女性は育児家事時間が短縮、男性が増えていることも紹介しました。完全な平等分担にはなっていませんが、差は縮まっているのです。
男性がより育児や家事に関わるようになったのはなぜか?原因と考えられるノルウェーが踏み切った大胆な家族政策について紹介し、最後に「ノルウェーに近づくには?」と自分なりの考えで締めくくりました。初めてノルウェーへ旅行した1992年から25年が経ち、自分の半生以上になってしまいました。長年の(無駄に長い)観察に基づくものです。
講演後、少し質疑応答があり、それからノルウェー大使館から寄付された2つのプレゼント(すごく面白いリフレクターとムンクメモ帳)をお渡しするために、皆さんとじゃんけん大会になりました。ぷちとりで散々やっているので役に立ちましたね~。持参した絵本は販売し、お買い上げの方には特製スタンプを押してもらったり、押したり。久しぶりのスタンプ大会です!
ノルウェーについて学ぶ会の皆さんと、同じ建物内でランチをします。ノルウェー労働党女性局かつて発行した”Women can do it!”の翻訳作業をずっと続けているお話を伺い、頭が下がる思いです・・・それが完成した暁に、またノルウェーへ行きたいとお話されている姿は楽しそうでした!
午後は落合恵子さんの講演「いのちの感受性2017-人権・平等・平和」を大ホールで拝聴しました。これくらいの方になるとパワーポイントなんて必要ないんだな~と。緩急つけながら、復興支援活動や政権批判など時に怒りとユーモアを交え、時に朗読を交えながら語りかけてきます。「私は72歳です」という言葉を何度も繰り返しされていましたが、「こんな72歳に私もなりたい」と思わせる魅力あふれる時間でした!
講演終了後、木村さんに見送られながら仙台駅へ。東京にいると「震災」のことを殆ど考えることがなくなっている自分に気づきながら新幹線で帰路につきました。
東京と仙台。ノルウェーへの憧れと興味を保ちつつ、これからもご縁を大切にしたいな~と願っております!Tusen takk!
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