2年ぶりの翻訳絵本『わたしの糸』(原題”Tråder” トーリル・コーヴェ作、青木順子訳、西村書店)が発売になりました!
トーリル・コーヴェさんといえば『うちってやっぱりなんかへん?』のユーモラスな作風が特徴ですが、『わたしの糸』から、今までの作品と異なる印象を受けるかもしれません。
空から垂れ下がっている無数の「糸」。たくさんの人が糸をつかまえようと手を伸ばしています。
ひとりの少女が、赤い糸をつかみ、糸に導かれるままたどり着いた場所で見つけたものは・・・小さな子どもでした。
少女はある決意をします。2人の関係はどうなっていくでしょうか?
本作は、短編アニメーションが先に制作され、昨年の広島国際アニメーションフェスティバルのコンペで上映されることになりました。
映画は映像と音楽のみで構成され、静謐な世界を感じられます。トーリルさんが「映画上映後、観客が静まり返っていた」とおっしゃってましたが、納得です。ひたすら美しい。
“Threads” Torill Kove, provided by the National Film Board of Canada
トーリル・コーヴェさんは映画祭参加のために家族で来日され、東京のブックハウスカフェでトークショーを行いました。その時の様子はこちらのブログでご覧になれます。
あの時はまだ出版が決まっていなかったのですが、多くの方の「糸」を通じて邦訳が刊行される運びとなりました。とても感慨深いですね。
翻訳作業に取り掛かる前に、トーリルさんに本作の創作プロセスをお聞きしました。
『うちってやっぱりなんかへん?』と同じように個人的な経験(養子を迎えたこと)が物語づくりの発端になったそうです。
その出発点から、物語は大きな広がりを見せます。
「愛と自立の物語」とトーリルさんは語っていますが、人と人の理想的なつながりが描かれていると思いました。
人を愛し育てる上で大事なのは、自分の足で立てるよう、道を見つけられるようにしてあげることなのだなぁとしみじみ。本書は特に「ノルウェー」だけに限らず、普遍的な物語ですが、「自立の大切さ」という点においてはノルウェー的かもしれません。
創作プロセスをお聞きした際に、映画『万引き家族』にも言及されていました。カナダで鑑賞されたそうです。
『万引き家族』では血縁関係にない「疑似家族」が登場しますが、今やどれほどの小説や漫画、映画やドラマなどに「疑似家族」が描かれているのか・・・この現象は興味深いですね。
『わたしの糸』では「母と子」のつながりが描かれています。ただこの関係性は、肌の色や年齢はもちろん、国境、性別、果ては人間を超えたつながりが可能なのでは?とも感じました。
私は実子も養子もいませんが、それでも何らかの糸で、ノルウェーとのつながりだったり、様々な出会い(とらちゃんを含む)に結びついたと思います。
そういえば今年、再婚をしました。赤い糸と表現するのは恥ずかしいですが(切れちゃうかもしれませんし・・・)、私も手を伸ばしていたひとりでした。
翻訳する上では、オリジナルの「詩的なテキスト」をいかに日本語に反映させるかに苦心しました。これに尽きます!
自分の人生を歩きはじめるすべての人や
歩いて歩いて、ちょっと疲れちゃった人にも。
いろいろな方のお手元に届くように願っています~。
さてさて。『わたしの糸』刊行記念トークショーを谷中ひるねこBOOKSさんで開催します!
ここには書き切れなかったトーリルさんの創作プロセスや思いをお話します。さらに未訳作品をご紹介しますが、中でも私が偏愛する「ネコ絵本」を見ていただきたいですねー。レッスンでお見せした際に、皆さん驚いていました!
●日時:10/10(木)18:30~20:00(開場18:15)
●場所:ひるねこBOOKS 〈台東区谷中2-1-14-101〉
● 参加費:1,500円(当日お支払い)
イベントの詳細・お申込みはこちらをご参照ください。
すでに素敵なブログで『わたしの糸』をご紹介していただきました。Tusen takk! ぜひぜひご一読ください♪(掲載日時順)
・ひるねこBOOKSさんのブログ
・スウェーデン洋菓子&絵本 リッラカッテンさんのブログ
・北欧ビンテージ食器&雑貨Fukuyaさんのブログ
・北欧区さんのブログ
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