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ノルウェー・テレビ番組レビュー ~リッチな男性を狙うのはいけないこと?~

NRK(ノルウェー国営放送)には受信料を払わないと、と思うくらい助けてもらっています。ノルウェー語レッスンでは、NRKの配信番組をほぼ毎回、視聴しています。
レッスンには不向きですが、興味深い番組を見つけたので、ご紹介しますね。

ノルウェーで有名なコメディアンのHarald Eia(ハーラル・アイア)が、新番組”Sånn er Norge“「ノルウェー、こんな感じ」をスタートしました。ハーラルの新番組は、正直、評判は良くないのです。たぶん、ノルウェー人には当たり前すぎる事実を羅列しているからでしょう。ですが、外国人がノルウェーを理解するためには、いい番組ですよ!
毎回20分弱で、ハーラルが「ノルウェー」という国の国民性や価値観などをパワポ形式でプレゼンします。特に2回目の”Frihetsmaskinen“「自由のしくみ」が面白かったですねー。

この回では、「自由を愛する国」のアメリカとノルウェーを以下のテーマで比較します。

●親と子の関係

こちらのブログでも紹介したノルウェーの人気ドラマSKAMのアメリカ版は、脚本に修正を加えたそうです。というのも、アメリカの親はもっと子どもに干渉をするので、ノルウェー版のように親が子どもに関わってこないのは不自然なのが理由だとか。
その上で、アメリカの大学の高い学費を例に取り上げます。子どもは親に学費や生活費を負担してもらうことで「借り」「負い目」を感じてしまうとの指摘。結果、親からの様々な干渉もやむなし・・・これって自由と言えるのか?
対するノルウェーは?例を挙げていきます。
ノルウェーの大学は国立が多くて、学費は無料。さらに生活費などはLånekassen「学生ローン」を利用するのが一般的です。学生は親に学費や生活費を負担してもらうことなく生活でき、親に対して「借り」はありません。それが両者の「自由」かつ「自立した」関係が保つことにつながる。なるほどー。

●雇用主と労働者の関係

アメリカとノルウェーでは、雇用主の権力が違いすぎるそうです。アメリカはノルウェーに比べて労働者を保護する法律や組合、セーフティーネットが脆弱とのこと。仕事を辞めたら、医療保険も失ってしまうような状況では、理不尽なボスに耐え続けることもやむなし。これって自由??
ノルウェーでは労働者の権利を保護することで、より「自由」かつ「対等」の雇用関係が築けるという指摘、納得です!

●妻と夫の関係

これが一番「あ、そうか!」と感じたテーマです。
ハーラルは「リッチな男性を捕まえる方法」を伝授するアメリカの動画を紹介します。「なぜここまで金持ちの男にこだわるのか??」とハーラルは違和感を隠しません。(もちろんノルウェーでも「リッチな男性」は人気がありますが、必死さが違いますよね・・・)
「夫が家族を養うべき」と考えるアメリカ女性の割合が71%! ええ??アメリカの女性ってたくましいイメージなのに案外、依存している??
しかーし、リッチな男性に頼らざるを得ないアメリカのしくみが解説されます。
まず出産費用だけで10万クローネ(約120万)、育休なし、子ども手当なし、幼稚園・保育園の費用も高いと数字を挙げていきます(例外はあるでしょう)。
翻ってノルウェー。出産は無料、有給育休あり、子ども手当あり、保育園は安いです。
なので、そこまで「リッチな男性」に執着する必要はない・・・。女性の働く環境がアメリカより整っているおかげで、自分で稼げる可能性があります。
アメリカの専業主婦率は25%、ノルウェーは3%。ジェンダーギャップ指数でみると、ノルウェーは2位、アメリカは51位。アメリカ、実はこんなに低かったのか!とびっくりです(121位の日本に言われたくないかー)。
ノルウェー女性の方が男性と「自由な」関係を保てるしくみが明らかになりました。

3つのテーマを見て、アメリカ=日本とも置き換えられると感じました。
アメリカは税負担が少なく個人裁量が大きい「小さな政府」、ノルウェーは税負担が大きく個人裁量が小さい「大きな政府」です。
「自由」へのこだわりが大きそうなアメリカが、家族や会社組織などから平等な関係を築けずに「不自由」に陥っていると感じちゃいました。
金持ち狙いの女性を「あさましい」「依存している」と断じるのは簡単だけど、そもそもセーフティーネットがほぼ整っていない状態で、女性に「自立」だけを求めるのって・・・フェアでしょうか?
(ところで、番組司会者のハーラル・アイアはフェミニストたちから批判された番組を制作した過去があるので、この番組は余計に興味深い!)

ノルウェー語レッスンで使用したテキスト”Et langt kaldt land, nesten uten mennesker“「ぽつんと遠くて寒く、ほとんど人間がいない国」で、文化人類学者のThomas Hylland Eriksen(トーマス・ヒュッラン・エリクセンは「自由」を「ノルウェー人が強くこだわる価値観」として定義しています。
「自由を享受しつつ、安心できる生活を維持したい」というバランスを保つためには、(完璧ではないけど)「ノルウェー流」が先進的に映りますね。特に最近。

オスロの彫刻”工場の少女たち”(Fabrikkjentene)

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