ブログ

「ノルウェー ことばと文化」@朝日カルチャー横浜

コロナウィルスの影響で、様々なイベントが中止になっています。私も少しですが影響を受けています。
朝日カルチャー横浜教室で「ノルウェー ことばと文化」という連続講座が予定されていて、2/22は開講できましたが、3/7は中止になってしまいました。とても残念です。
幻になってしまった2回目についても触れつつ、どんな講座だったのか記しますね。

Velkommen!

タイトルの「ことばと文化」。深いですよねー。言葉はその国の歴史、文化、国民性、社会や風俗などたくさんの要素が反映されています。ノルウェー語については話し慣れているとはいえ、PPT作りは悩みました。一般受けしない「ノルウェー語」を「いかに楽しく、マニアックに伝えるか」を目指しました。
以前のサイトで書いたはずなのですが、NRK(ノルウェー国営放送)が2004年から放送した”Typisk norsk”「典型的なノルウェー語」という番組が、そのお手本です。ノルウェー語を異なる角度で、ユーモラスに取り上げた番組は「言葉ってこんなに面白いんだー」と刺激を受けましたね。ノルウェーでは社会現象になるくらいの人気番組でした。

本とDVDを持ってます!

・・・悩みつつ2/22の当日。コロナウィルスの影響でキャンセルが出てしまったそうですが、10人の参加者が教室に集まりました。「ノルウェーに行ったことがある人は?」と聞くと、ほぼ全員の手が上がります。ノルウェー・エリート!!少数精鋭!!!と嬉しくなりました。
当日の内容は大きく分けて
・スカンジナビア内の言葉の比較
・なぜノルウェー語は2つの類似した公用語があるのか?
・発音と音読
です。

まずデンマーク語、スウェーデン語、ノルウェー語の比較ですが、簡単なフレーズの各国語比較、またネットからアクセスできる各国ラジオPodcastの音声を選び、聞き比べをします。デンマーク語のモゴモゴした響き、スウェーデン語とノルウェー語の「お人よし」な響き、どうしてそう聞こえるのか?を説明しました。
ノルウェー語の”Falske venner”「偽の友達」にも触れました。同じ単語でも、意味が異なる場合を指します。例えばデンマーク人やスウェーデン人と話す時に、この話題は盛り上がりますよー。
・・・共通点が多い3か国語ですが、それでも違う言葉です。ノルウェー人、スウェーデン人、デンマーク人の誰が一番、他の言語を理解できるか?というばかばかしくも素敵な実験が、前述の”Typisk norsk”という番組で行われました!PPTの作成時にDVDを見直したのですが、オスロのカールヨハン通りで行われた競争は、Youtubeにも一部の動画がUPされています。もちろん優勝は・・・ノルウェー人!

ノルウェー語とデンマーク語は書き言葉が似ていてこと、スウェーデン語はスウェーデンのテレビで長年、慣れ親しんでいたことが優勝の理由として考えられます。今までの経験では、デンマーク人とスウェーデン人のコミュニケーションが難しそうでした。ということでノルウェー語がわかると、デンマーク人やスウェーデン人とのコミュニケーションも夢ではない!(とはいえデンマーク語の発音には都度、驚かされます!)

そしてノルウェー語にはなぜ2つの類似した公用語(BokmålブークモールとNynorskニーノシュク)があるのか?問題に迫ります。これはノルウェーの歴史と大きな関わり合いがあり、大げさに言えばノルウェー人を理解する上で大事なことだと思っています。なので「ノルウェー通」の皆さんに向けて、詳しくお話をしました。
・そもそもなぜ「ノルウェー語」を作る必要があったか?
・誰がどんな風に作ったのか?なぜ足並みを揃えられなかったのか?
・「共通ノルウェー語」構想と頓挫、戦争の影響
・「選択の自由」が特徴のノルウェー語

「選択の自由」。これはノルウェー語の大きな特徴の1つです。
「女性名詞は男性名詞として扱ってもOK」という珍妙な文法・・・なかなかないですよね!他にも、複数のスペルが認められている単語の紹介もしました。「ノルウェー語、面倒!」と後ずさりするより、この「ややこしさ」を面白がって欲しいですー。だって「母」という単語をMora かMorenと教科書に載せるかで揉めて、激高した親が教科書を燃やすなんて・・・「国語」にこれだけ燃えることができたノルウェー人、すごいなぁと感心します。

さて。「そろそろ口を動かしたいですよね?」とちょっと強引に誘導し、「ノルウェー語の発音」コーナーに移ります。アルファベットの発音では、唇をすぼめたり突き出したり、舌の位置に注意しながらトライ!皆さん、とてもお上手でした!英語とは違う長く伸ばす母音と短い母音のルールも説明します。Noraは「ノラ」じゃなくて「ノーラ」、Kariは「カリ」じゃなくて「カーリ」!と強調。
・・・と基本は抑えたので、実際の音読に挑戦します。とはいえ、いきなりイプセンの戯曲にしてしまうのは酷なので、テキスト量の少ない『わたしの糸』(トーリル・コーヴェ作、青木順子訳、西村書店)の数ページを抜粋しました。この絵本の音読はセレクトレッスン「超!ノルウェー語入門」でもやっていますが、案外、読めてしまうものなんです。ノルウェー語の発音はローマ字読み+不規則ルールで成り立っているので、少ない文字であれば「おおーーー、こんなに読めちゃう!」と講師が感動しちゃいますねー。

Tråder

最後に「ノルウェー人は歌うように話す」説を検証するため音読を聞きました。ノルウェー民話”Askeladden som knappåt med Trollet“「トロールと食べ比べをしたアスケラッデン」のCDに耳を澄まし、まるでノルウェーの雄大なフィヨルドのようなイントネーションを体感します。ノルウェー語を始めたばかりの方は「なぜ疑問文じゃないのに、⤴に読んでいるですか?」と不思議そうなんですよね。ノルウェー語の単語には、トネーム(音調)と呼ばれる上がり下がりがあるので、全体的に「音楽のように」聞こえます。
最後に質疑応答が出て、1回目は楽しく終了しました!

幻の2回目は、ノルウェー語の文法(文のしくみ、人称代名詞、動詞の活用、名詞の性、合成語など)を紹介し、レシピの解読や頻出フレーズの練習をする予定でした。さらにことわざや方言の紹介、ノルウェー語の様々な変化(ジェンダー意識や人々の生活様式による)もお話ししたかったです。景品つきのクイズも考えてました。ああーーー、残念!

改めて受講して下さった皆さま、Tusen takk!
またの機会にノルウェー語漫談にお付き合い下さい。「ノルウェー語」から透けてみるものがたくさんあって、楽しかったです!

NB!告知もどきの補足:拙著『ノルウェー語のしくみ《新版》』はノルウェー語について楽しく解説した本です。おこもり中の方、これを機会にお手に取ってみませんか?

ノルウェー語のしくみ、持ってるかい?

コメント

  • コメント (0)

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

PAGE TOP